2011/3/25 第1回 東北支援『福島・南相馬方面』

『被災地の犬たちを救いたい。ある動物保護団体が物資を被災地に運ぶボランティアを募集している。参加したいが私たちには足がない。一聡さん、なにか手立てはないか?』

第一回の物資運搬プロジェクトは、半ば偶発的な形で実現した。冒頭にある通り、D・O・Gの活動で交流のあった2人の保護犬活動家に声をかけられた高橋一聡は、自分のネットワークを通じて車両の手配と、女性2人での被災地での活動に配慮し、男性ドライバーを探した。その結果、車両は物流・倉庫会社を経営する諏佐氏に無償でマイクロバスを貸与していただき、またドライバーには、大学時代からの友人である橋本氏が引き受けてくれた。

諏佐氏から無償貸与していただける車両が、運搬能力のあるマイクロバスであったため、ボランティア募集をかけていた動物保護団体(以下AR)の物資のほかに、D・O・Gでも物資を募り、当初『ファーマーズマーケット』のトラックに混載する予定であった動物救援物資を、直接被災地に運搬することと連結させた。

ここで問題となったのが、現地までのガソリン代を含む経費の捻出と、物資を受け入れてくれる避難所および保健所をピンポイントで探せるかどうか、だった。

経費については、D・O・Gに集まった募金額では足りなかったため、高橋一聡の声掛けに賛同していただいた方々に個人レベルでご尽力いただき、なんとか持ち出しせずに現地入りできるところまではたどり着いたが、現地での物資受け入

れ先については、未知数のままであり、新潟にあるARで物資を荷積みする際に、情報を仕入れるほかはない、というような状況の中、出発の日を迎えることとなった。

今回のミッションは、被災地でのペット達、および飼い主の方々に想いの詰まった物資を手渡しし、混乱の中にあると思われる現地のペットが置かれている状況を把握することが第一の目的である。しかし、D・O・Gとして被災地で出来る可能性のある支援活動の対象は、以下の5通りあり、今後活動を継続していくには、D・O・Gの規模から鑑みて、下記のなかで優先順位付けをする必要があり、それを見極めることも今回のミッションの一つとした。

支援① 犬と一緒に避難している『人』

支援② 避難所にいて、犬を他に預けている『人』

支援③ 犬を預かっている『人』

支援④ 犬を失った『人』

支援⑤ 飼い主を失った『犬または動物』

■3月25日(金)深夜、新潟へ

最初に向かったのは、2人の女性がアクションを起こすきっかけとなった新潟に本部を置くARにてフード等の物資を荷積み。

ARの情報によると、震源に近い宮城や岩手には、すでにペットフード等の物資と、いくつかの動物保護団体が現地入りして活動しているが、福島県南部沿岸地域にはそうした団体が入っているという情報が入っていないとのこと。

この情報をもとに、行き先を福島県に設定し、磐越自動車道から東北道を経由して、福島市内に入った。

■3月26日(土)、福島市内での活動

まずは、県北保健所に行って市内の避難所の位置と、現状でペットの置かれている状況を入手するこ

とを試みるが、混

乱していることもあり、有力な情報を得ることができない。

そこで、実際の避難所を回って現場の状況を把握し、物資を必要としているのであれば、まずはそれを届けることが先決と考えた橋本チームは、福島大学避難所へと向かった。

体育館が避難所となっている福島大学では100人強の被災者が避難生活を送っているのだが、担当者(鈴木氏)の方がよく現状を把握していて、聞けばドッグフードが残り一袋となっていて、橋本チームが持ち込んだフードは非常に喜ばれた。福島大学避難所は、ペットフードに関しては配給ルートがなかったが、人間用の物資については比較的足りているとのことであった。

続いて向かったのは、県営あづま総合体育館避難所。ここは、最近まで2400名の避難所となっていたが、現在は半数に減って1200名あまりとのことで、福島大学に比べて規模が大きい。この避難所も、津波の被害はないということもあるのか、比較的物資の供給は足りているようであったが、不自由な生活を被災者が強いられていることには変わりない。ここでも、物資を荷降ろしし、被害状況が過酷な福島県南部沿岸地域に向かうことにした。

■3月26日(土)南相馬市での活動

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福島市内を後にした橋本チームは、途中の飯館村(いいだてむら)にて放浪していた犬数頭にフードを与えるなどしながら、沿岸部へと向かった。

南相馬市エリアは、津波による壊滅的な被害に加え、福島第一原発の30キロ圏内ということもあり、福島市内とは比べ物にならないほどの深刻な状況下にあった。

まず、津波の被害を免れた南相馬市役所に行き、ペット関連の情報を収集しようとしたが、現状は人的被害の対応で手一杯の状況であった。しかしながら、橋本チームの粘り強い交渉と担当者の尽力で、定期的に行われている市役所からの市内アナウンスの中に、『ペットフードが市役所にありますので、必要な方にお分けしま

す』旨を盛り込んでもらうことに成功し、物資の荷降ろしを行った。

次に向かったのは、警察署。ここは市役所の担当者に、ペット関連情報ソースとして勧められて行ったのだが、実際はまったく把握されておらず、行き先を保健所に変更した。

保健所では、放射能汚染を測定するスクリーニング検査場所となっていて、自衛隊が常駐している状況であり、ここでもペット関連の対応にまでは手が回らないというのが現状だった。しかしここでも、橋本チームの交渉により、もし保護されたペットが持ち込まれた場合、通常の規定での殺処分は行わない約束を取り付けた。

橋本チームの3人と

もにスクリーニング検査を受け、問題なしと判断され、1日目の活動を終え、市内巡回によるペット保護をしながら沿岸部を北上し、宮城県に向かうという翌日のスケジュールを確認し、車中泊となった。

■3月27日(日)南相馬市内から沿岸部を北上

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夜が明け、沿岸部に向かうと、想像を絶する被害状況が眼前に飛び込んできた。

その凄まじい被害状況は、テレビ画面で連日流されていたものを視聴しているのとは比較にならない衝撃と恐怖、そして悲しい現実とを、橋本チームの3人に突きつけた。

この凄まじい現実を突きつけられた精神状態の中で、ペットをレスキューするモチベーションを持ち続けるのは、いくら事前に心構えをしてきたとはいえ、困難であることは想像に難くない。

それでも、橋本チーム3名は、津波より倒壊した家につながれたままの犬にフードを与え、人がいればその方にペットの状況を取材し、放浪犬を数頭保護し、無人の牛舎に放置されていた肉牛に干し草を与え、馬に餌を与えるなどの活動を行った。予定していた宮城県までは到底たどり着けず、保護した数頭の犬を保健所に預け、すべてのミッションを終えることとした。

帰路につく途中、避難指示が出ているはずの地域で、暗がりのなかを歩く一人の男性を発見し、声をかけてみた。『救援物資運搬中』と表示のある橋本チームのマイクロバスを見た男性には、大変感謝していただいたのだが、見るとゴルフクラブを

手に持っている。

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橋本氏が、なぜゴルフクラブを持って歩いているのかを尋ねたところ、男性は、自分の畑の農作物を食い荒らす野犬が増えて、それらを追い払うため、自分の畑を守るため、放射能の危険を顧みず、ゴルフクラブを威嚇の道具として持ち歩き、定期的に見回りをしているのだという。

これが、被災から2週間での現場のリアルな現状である。農作物を食い荒らしているのは、もともと飼い犬だった可能性は否定できない。この男性を動物愛護云々の机上の議論で、誰が責められるだろうか。もちろん犬たちも被害者であり、守られるべき存在である。我々が計り知れない状況が、この先も被災地で起こり、またさらに深刻な状況に発展していくことは、容易に想像できる。

また、家が仮に全壊もしくは半壊していても、そこに犬などのペットが繋がれていた場合はもちろん、放浪している犬猫であっても、それらは飼い主が存在する可能性がある限り、個人の所有物としてみなされる。当然、勝手に県外へ持ち出すこともできなければ、繋がれている鎖を外すことにも、相当の正当性がなければならない。

動物をレスキューした場合、

A. レスキュー⇒その場所に貼紙をして役所(保健所)に持ち込む

B. レスキュー⇒その場所に貼紙をして県外へ持ち出す

C. レスキュー⇒貼紙をしないで役所(保健所)にそのまま持ち込む

D. レスキュー⇒貼紙をしないで県外へ持ち出す

E. レスキュー⇒その場所に貼紙をして役所(保健所)に届けたうえ、県外へ持ち出す

※この場合の『貼紙』とは、レスキュー(保護)した団体の名称・連絡先・保護した日時などを明記した紙の事。

という対処の方法が考えられる。

そこが混乱の中にある被災地域であっても、所有者不明のペットや、所有者が直接保健所なり役所に持ち込んだペットのみが、保護団体が救える対象となりえるという法律上の原則があるため、上記『C』や『D』の行動は慎むべきであろう。

今回の活動では、まずは救える命が目の前にあるならば、そこにフォーカスして活動すべきであると判断し、数頭の犬をレスキュー、上記項目でいえばAのアクションを実行した。今回の状況下でのこの行動は正しい判断であったと思う。

しかしながら、D・O・Gは動物保護団体ではない。あくまで『人とペットとのよりよい関係』を構築するというバックボーンを意識しながら、軸をぶらさず、適材適所に行動していくべきであろう。

また、今回は動物救援物資の受け入れ先を、手探りで掘り当てなければならない状況となり、福島大学や南相馬では、結果的にそれが功を奏した形となり、今後郵送での物資支援ルートを確保することができたが、被災地の中には、いまだライフラインや通信が断絶している地域も多くあるので、今後はそうした<大団体の救済の手が回らない>地域のニーズも、足を使ってピンポイントで探っていくべきだろう。

■今回の活動で出来たこと。

支援① 犬と一緒に避難している『人』        ○

支援② 避難所にいて、犬を他に預けている『人』   △

支援③ 犬を預かっている『人』           ×

支援④ 犬を失った『人』              ×

支援⑤ 飼い主を失った『犬または動物』       ○

文責:村松